北京五輪の団体戦でショート、フリーとも1位になりROCの金メダルに貢献したカミラ・ワリエワ選手。ドーピング検査で陽性となったことが11日に発表され、スポーツ仲裁裁判所(CAS)の判断に注目が集まっている。AERA 2022年2月21日号の記事を紹介する。
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2月9日、衝撃的なニュースが流れた。
発端はフィギュアスケート団体戦のメダル授与式が2度延期され、国際オリンピック委員会(IOC)のアダムス広報部長が「国際スケート連盟(ISU)と法的な協議が必要になった」と発表したことだった。その後、ロシアの有力ニュース媒体が、カミラ・ワリエワ(15)がドーピング検査で陽性となったと報道。検出されたのは微量のトリメタジジンで、心臓へ流れる血液量を増加させ狭心症などの治療に使われる。検体は昨年12月にロシア選手権で採取されたものだという。11日には五輪のドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が、ワリエワの陽性を正式に発表した。
■シングルへの参加は?
ワリエワは、複数の4回転を武器に持ち、今季世界最高点を何度も更新してきた。表現力もあわせ持ち、“女子史上最強の選手”とも言われる。強豪がひしめく今季のロシア選手権と欧州選手権も制していた。
シングルに先だって行われた北京五輪の団体戦でもショート、フリーとも出場して1位になり、ロシア・オリンピック委員会(ROC)の団体戦金メダルに大きな貢献をした。またオリンピックで初となる4回転を成功させた女子という記録も作り、個人戦でも圧倒的な優勝候補として注目されていた。
陽性反応が正式に発表されたため、本来ならROCの団体戦の金メダルだけでなく、ワリエワの2022年欧州選手権のタイトルの剥奪、15日から開始される女子シングルへの参加資格も停止というのが通常の処分だろう。
ところがロシア反ドーピング機構(RUSADA)はワリエワを暫定的に資格停止にしたが、9日にワリエワ側から異議申し立てがあり、事情聴取の後に暫定資格停止を解除。IOCはこの決定を不服とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に上訴して判断をあおぐ見通しだ。