東尾修
東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、プロ野球オールスター戦で感じたことを綴る。

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 日本のオールスターが終わった。巨人などは新型コロナウイルスの感染で多くの辞退者が出るなど、残念に感じたファンの方もいただろうが、まず2試合を無事に戦い終えたこと、今年は特に第2戦が松山市の坊っちゃんスタジアムで行われたが、フランチャイズがない県での球宴、本当に開催できて良かったと思う。

 7月27日の第2戦には、私もラジオの解説で球場に行った。実はロッテの佐々木朗希を生で見るのは初めてだった。1回を3安打1失点で、三振こそ奪えなかったが、2014年に日本ハム大谷翔平(現エンゼルス)が記録した日本選手の球宴最速に並ぶ162キロをマークした。右手中指のマメをつぶした1日の楽天戦以来、26日ぶりのマウンドで、これだけのことができたら十分だ。初球から16球連続で直球を投じるなど、「自分が何を求められているのか」をしっかりと理解し、パフォーマンスを示した。

 昭和の時代の球宴は、圧倒的人気を誇った巨人のいるセ・リーグを何とか打ち負かそうとするパ・リーグという図式が見え、ギラついたものがあった。各球団ともにオールスター常連といった選手が、ベンチの中心を占領し、新参組は端っこにいた。良くも悪くも「先輩」「後輩」と上下関係があった。その時代に生きた人間として、もっとギラつく部分があってもいいと思う一方、もはや今の選手たちに与えられている「使命」は違うのだろうと感じた。

 少年少女の野球人口の減少が叫ばれて久しい。野球を行う広場すらない。テレビをつければプロ野球があって、父親が毎日野球中継を見ているから、野球を実際にやらない人でも、野球のルールが自然と身につくといった時代ではない。

 その時代ならば、技術を示せば良かったが、今の野球界のトップの選手たちは、本当に心から野球が好きで、楽しむ姿をどう見せるか。それが大事だと考えている。野球のプレーだけではない。今話題の「きつねダンス」もそう。「何か野球場って楽しいな。選手も心から楽しそうだ」ということを伝えること。先輩も後輩も関係ない。みんなが楽しんでいたのは、笑顔の多さからも感じることができた。

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