「個性という名の欠落」に自信を持つためには、何でも人や環境や社会のせいにしないことが大事です。「互助」を求めるなら、まずは「自助」に努める。自助力をつけるには、アウェーで画一的な場所に身を置くのがいちばん手っ取り早い。妥協や譲歩といった「折り合いの付け方」を知らずに自己主張だけをしても、「欠落の克服」にはなりません。学校に行かない子供に限らず、最近はあらゆる自己主張の声通りが良くなっているせいか、この「自助努力」を棚に上げている人が多いように感じます。

 話を「不登校ユーチューバー」の彼に戻しますが、なんと「本当は学校へ行っている」との噂があり、それに対してもまた憤っている人たちがいるそうです。どちらにしても文句ばかり言われて難儀だなと思う一方で、「客持ってるなぁ」と感心させられます。そしてなんだか懐かしい気分になりました。

 以前、私も「ミッツ、本当は女好きらしい」と書き立てられたことがあり、同じように「嘘つき!」だの「金返せ!」だのといった声を浴びせられたのですが、結局世の中というのは、尊重と否定の間で常に揺れているものなのです。ましてや「個性」で金を稼いでいる人に対しては尚更に。母親からも「あなた、ゲイって嘘なの!?」と叱責され、何の因果か親に向かって「僕は正真正銘の同性愛者です。信じてください」と、意味不明な弁解をするはめになりました。

 何度も言いますが、人と違う個性なんて厄介なことの方がほとんどですから。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2022年2月18日号

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