■モールは地域インフラ
冬枯れの水田の奥に見えるモールは、いかにも周囲とは異質な感じで、そこに別世界が存在しているよう。
新興住宅地に隣接したモールもある。まだ、家の建っていないスペースには草が盛大に生い茂り、真新しい家なのに、原野に立ち並ぶ廃屋のようにも見える。その奥に小さく、ショベルカーとショッピングモールの壁面が写っている。
モールの敷地内を撮った作品には原色で彩られた店の看板がひしめいている。
「ケーズデンキや青山がある、典型的なモールの風景です」
逆にモール内を写した写真にほとんど人の姿はなく、静寂な空気が感じられる。
一方、店舗の入り口がオレンジ色のネットで閉ざされ、廃虚のように見える写真もある。これはいったいなんだろう?
「テナントがほぼなくなっているんです。でも、モール自体は営業を続けている……。栄枯盛衰を感じますね」
小野さんは「もうモールは決して新しいものではなくなってきている」と指摘し、「これからモールは、どう変化していくだろうな、と思いながら撮っていたところもある」と漏らす。
「Amazonとかに代わられて、モールの実店舗に人が来なくなることもあるだろうし」
全国各地を訪ね歩きながら、モールがすでに地域のインフラの役割も果たしていることも感じてきた。
「もはやモールは、ないと困るくらいになってきている。もし、それが撤退してしまったら、地元の人は買い物難民になっちゃう。まあ、そこまでの状況にはどこもなっていないと、思うんですけれど」
■なぜ、モールを撮らないのか?
小野さんは、ショッピングモールは日本人の生活環境を大きく変えた存在だと、力説する。
「だから、すごく面白い撮影対象だと思うんです。ところが、ぼくの知るかぎり、モールを撮っている人はほとんどいない。なんで、みんなこれを写真のテーマにしないのか、ほんと、その理由を知りたいです(笑)」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】小野啓写真集「モール」出版記念写真展
BOOKMARC原宿店(東京都渋谷区神宮前4-26-14)2月18日~3月2日