* * *
「日本らしい風景、と思いますね。日本の現代風景」
小野さんはショッピングモールを写した写真を目の前にして、つぶやくように言った。
実は以前、小野さんがモールを撮影していることを知ったとき、なるほど、と思った。というのも、小野さんはもうひとつのテーマとして20年ちかく高校生を撮り続けているのだが、高校生とショッピングモールはいかにも相性がよさそうに感じたからだ。
作者のホームページには「写真を撮らせていただける『高校生』の方を募集しています」というコーナーがあり、応募があれば、全国どこへでも足を運んできた。
高校生をどこで写すかは「いっしょに話し合って決める」という。
「例えば、彼らのなじみの場所。それが、放課後によく行くショッピングモールだったりする。とりあえず、モールに行こうか、みたいな感じがありますから」
高校生にとって、モールはいかにも居心地のよさそうな空間だ。
「それで、日本中を訪れたんですけど、地方に行くたびに巨大なモールが現れた。そういう光景が続くようになると、モールという存在が気になった。『場』としても、その見え方にもすごく現代性を感じた」
■すごくいいかもしれない
初めてショッピングモールを写したのは2003年ごろ。当時、小野さんは滋賀県内の大学で事務職員を務めながら、休日を利用して高校生を撮影していた。
「生活圏内に『ビバシティ彦根』というモールがあったんです。それを撮ったのは偶然というか、自然な流れだった」
建物の中には吹き抜けがあり、そこを歩くと、上の階にも下の階にも店舗が見えた。
「そんなモール独特の光景を撮った。それはいまと変わらない。写した写真を見て、すごくいいかもしれない、と思った」
本格的に撮影を開始したのは10年ほど前。これまで訪れたモールはイオン、ららぽーと、アリオなど200~300カ所にもなる。
現在、イオンモールだけでも全国に168カ所もあるのだが、それをどう選び、撮影したのか?
「例えば、ウィキペディアには、主だったモールの面積が出ているんです。それで、最初は10万平方メートル以上を基準に大きなモールに行ってみよう、と撮影した」
ちなみに「断トツにでかいモールは、埼玉のイオンレイクタウン(越谷市)」で、実に約34万平方メートルもある。