競技に対して真っすぐ向き合い、五輪に心血を注いだからこそ、ここまで深く考えられる。私は、この言葉を見て、軽はずみな「責任を背負わないで」という言葉はかけられないなと思った。競技とどう向き合ってきたか。本人、仲間にしかその距離感はわからない。野球というスポーツでここまで命をかけられるかな。
高梨は自らの進退についても「考える」としているが、私が思うのは、どんな決断を下すにしろ、今回の結果を受けた早急な決断だけはしてほしくないということだ。時間を要するかもしれない。だが、一度リセットして、頭の中をニュートラルにして、自らが愛したジャンプ競技との距離感を感じてもらいたいと思う。日本に勇気と感動を与え続けた選手である。誰もが、その決断まで、温かく待ってくれるはずである。
東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝
※週刊朝日 2022年2月25日号