子ども時代の親からの虐待の傷は、大人になっても深く残る。虐待の報道が後を絶たないが、「負の連鎖」を断ち切るのは、社会全体で取り組む課題でもある
子ども時代の親からの虐待の傷は、大人になっても深く残る。虐待の報道が後を絶たないが、「負の連鎖」を断ち切るのは、社会全体で取り組む課題でもある

■相談の重要性を教育

 虐待は親が貧困状態にあることが多く、生活に余裕がないため苦しみが子どもに向かうことになる。現在、日本ではPTSDの治療は保険適用になっていないものもある。すべての虐待被害者が、無償、もしくは保険適用される適切な治療を受けられることが大切だと話す。

「SOSを出していいと言われても、虐待を受けてきた大人は出し方を知らないので、そのため虐待の連鎖が起きます。義務教育の段階から、『困った時は誰かに相談していいんだよ』と伝える訓練を、授業で取り入れることが大切です」

 羽馬さんは、20代から精神科医の診断を受けてきた。しかし、医師に幼少時の虐待のことを話しても誰からも理解されず、医師が代わるたび異なる病名をつけられた。3年半ほど前、15人目でようやく自分を理解してくれる医師と出会い、ここ2年近く症状が落ち着いているという。

 羽馬さんは、虐待を受けている人、大人になって虐待の後遺症に苦しんでいる人に、「あきらめないで」と呼びかける。

「あなたを理解し、味方になって助けてくれる人は必ずいます。あきらめないで、助けを求めてください」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年2月21日号より抜粋

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