ジャーナリストの田原総一朗氏は、50年温室効果ガスゼロや原子力発電について、態度をあいまいにする岸田内閣に苦言を呈する。
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現在、オミクロン株による新型コロナ感染拡大が大問題となっているが、それ以上に深刻な問題には、深刻すぎるためか、岸田文雄内閣も真っ向から取り組むのを避けているように見える。
2015年12月、世界の先進国の担当幹部たちが集まって、パリ協定なるものを定めた。
地球の平均気温が2100年までに3度以上上昇するとされていて、協定では、気温上昇を産業革命前に比べて1.5度までに抑える、と定められたのである。
そして、欧州の先進国はいずれも、2050年までに電力エネルギーとしての温室効果ガス排出をゼロにすると宣言した。
当初、米国と日本は50年温室効果ガスゼロを打ち出さなかったが、2020年11月の大統領選でバイデン氏が当選すると、離脱していたパリ協定への復帰を宣言し、日本の菅義偉首相(当時)もこれに合わせるように、50年温室効果ガスゼロを宣言した。
しかし、50年温室効果ガスゼロを実現させるために、30年までに石炭火力、石油火力などを具体的にどのくらい減少させるのか、そして、それだけのエネルギーをどういう方法で埋めるのか。
実は、私が取材したかぎりでは、自民党議員の多くが、安全保障とエネルギー問題に関しては、姿勢をあいまいにしたいと考えている。
たとえば、安全保障について。日本で自衛隊が結成されたのは1954年で、自民党が発足したのは55年である。自民党の最初の首相は鳩山一郎氏であった。
憲法第9条2項で、日本は戦力を保持せず、国の交戦権は認めないと明記している。だが、自衛隊は明らかに戦力を保持していて、交戦権も有している。そこで、鳩山氏は憲法改正を主張し、岸信介首相も憲法改正を強調した。
どのように憲法を改正するのかは問題だが、大矛盾を解消するには憲法を改正するしかない。ところが、続く池田勇人首相以後、憲法改正に真剣に取り組む姿勢は見られなかった。これはどう考えても、国民をだまし続けているのである。そこで、自民党の頭脳派の代表的存在であった宮沢喜一氏に会った。すでに何度か記しているが、宮沢氏から「米国から押し付けられた服、つまり憲法に体を合わせるのが安全だ」という説明を聞いて感服した。だが、その後の首相たちは宮沢論に安易に従っているようにも見える。