首脳会談前に記念撮影に応じる(右から)安倍晋三首相(当時)、トランプ米大統領(当時)、文在寅韓国大統領/2017年7月6日、ドイツ・ハンブルク
首脳会談前に記念撮影に応じる(右から)安倍晋三首相(当時)、トランプ米大統領(当時)、文在寅韓国大統領/2017年7月6日、ドイツ・ハンブルク

■李氏も関係改善訴える

では、こうした状況のなか、李在明、尹錫悦両陣営はどのような外交・安全保障戦略を持ち、最悪の状況に陥った日韓関係をどう扱おうとしているのか。

 李氏の外交ブレーンを務める魏聖洛(ウィ・ソンラク)元駐ロシア大使は「韓日関係は改善する必要があるし、それが両国の利益になる」と語る。魏氏は駐米公使や北朝鮮核問題を巡る6者協議の韓国代表も務め、国際情勢に精通した人物だ。

 魏氏は「北朝鮮の挑発を抑止するためには、韓米連合軍体制の強化とともに韓米日安保協力が必要です」と語る。魏氏は「尹陣営は北朝鮮の非核化だけに焦点を当てていますが、同時に北朝鮮との間で信頼を構築し、対話する仕組みも必要です」と主張。北朝鮮との間で「段階的・同時的な行動」を目指し、効率的な交渉案を、米国や中国などと協議しながら模索するとした。

 魏氏は6者協議代表当時、米朝協議と南北協議の同時進行を目指し、米国と強い信頼関係を築くことに成功した。駐米公使時代には、日本と北朝鮮が2002年9月の日朝首脳会談を目指して極秘に接触を続けているという情報を米国当局から入手したこともある。こうした体験から、魏氏は、ともすれば南北関係にばかり注目しがちな、李陣営のなかで、国際協力の重要性を説き続けている。

 李氏は昨年末、相星孝一駐韓大使と面会した。日本側には、李氏が進歩支持層を固めるために対日批判のパフォーマンスを繰り広げるのではないかと懸念する声もあったが、李氏は日韓関係の改善を唱え、日本側を安心させたという。

 李氏に比べ、より明確に米韓・日韓関係の改善を訴えているのが尹氏だ。3日の討論会で「大統領就任後、日米中朝の指導者とどのような順番で会談するか」という問いがあった。順番を明言しなかった李氏に対し、尹氏は米日中朝の順に会談を行うと明言し、米韓・日韓関係を重視する姿勢を強調した。

 尹氏陣営で外交・安保政策の諮問を受けている元政府高官は「文政権は韓米の信頼関係を傷つけ、韓日関係を放置した。この状態をまず修復する必要がある」と語る。元高官は日韓首脳会談で信頼関係を回復させた後、徴用工や慰安婦、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)、日本の対韓国輸出管理措置など様々な問題を包括的に解決する案を模索したい考えを示した。「韓米日安保協力を急速に復元・強化する必要がある。それが、中国と北朝鮮へのメッセージにつながる」とも語った。

次のページ