21年12月の検査では「検査の結果、「明らかな再発・転移を認めません」と診断された (撮影/加藤夏子)
21年12月の検査では「検査の結果、「明らかな再発・転移を認めません」と診断された (撮影/加藤夏子)

 この治療は正直、とてもキツかった。「最近の抗がん剤はそんなにつらくないよ」と聞いていたけれど、個人差があるんですね。治療開始3日目には吐き気と発熱で起きられなくなりました。吐き気止めの薬を飲みながら治療を続けましたが、「先生、もう無理です~」と何度弱音を吐いたことか。病院までは電車で片道1時間半。つらいときにはタクシーを使い、家事もままならない。出費もつらかったですね。味覚異常もあって、体重は5キロ減りました。それでも「がんに負けない。闘って勝ってみせる!」。その思いだけを原動力に、苦しい治療を続けたのです。

 治療が奏功し、がんは消えました。先生から「寛解ですね」と言われたときには本当にうれしかった。でもわずか3カ月後の検査でがんの再々発が見つかったのです。両肺、左右の内腸骨リンパ節、傍大動脈リンパ節。「え? そんなにいっぱい?」と聞き返してしまうほどに。

 どうするんだろう。どうなっちゃうんだろう。もう後がないのかもしれない。そんな思いでいっぱいになりました。

■先生の言うがままでなく自分で納得する治療を

 先生から提案されたのは、臨床試験に参加する形での抗がん剤治療。まだ治療方法があることが、私にとって唯一の救いでした。それでも私は、臨床試験に安易に飛びつく気にはなれなかった。「先生が言うんだから大丈夫」という、いままでの自分の姿勢に疑問をもったからです。ちゃんと理解して、納得してから治療したい。だって、受けられる治療はもうそんなに多くないはずだから。

 頼ったのは「日本対がん協会」が実施している電話相談でした。専門医が電話で相談に乗ってくれると知り、すぐに電話しました。そこで「私が主治医でも同じ治療法を提案すると思います」「臨床試験は効果が期待できない患者さんにはすすめないものです」と言ってくださり、私もようやく腑に落ちました。臨床試験に参加する決断ができたのです。

 ただ、この治療方法には「いつまで」という治療期間がありません。脱毛や血圧の上昇、手指がしびれるなどの副作用もあります。ゴールの見えない治療の中で、「がんと闘って勝つぞ」という戦闘態勢を続けることはもう無理だと思いました。

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