西側諸国の経済制裁の影響については楽観的だった。
「ハッキリ言って経済制裁は怖くない。ロシア人は笑っている。逆に制裁のおかげで国はどんどん強くなっている。輸入に頼っていた農業は、頼らなくてもいいように農業を作り替えている。昔は、チーズをイタリアから輸入していましたが、チーズが入らなくなったら自分たちですごくおいしいチーズつくれるようになった」
そしてこういうのだった。
「ウクライナのドンバスで8年間ずっと戦闘が起きているのに、ほとんどニュースになっていない。今は、ウクライナはかわいそう、ロシアが悪いという論調ばかり。ロシアはウクライナをとるつもりはないと思います。ドネツクとルガンスクからウクライナの軍隊追い出したいだけ。ロシアの一部にならないけれども、2つは独立した地域になると思います」
ウクライナ人、ロシア人に話を聞いてみたが、誰も戦争は望んでいなかった。プーチン大統領の決断を積極的に支持する人もいなかった。しかし、市民の間にも複雑な感情が横たわっていたのも事実だ。なぜ、事態は戦争へとつながってしまったのか。今度、どうなってしまうのか。
ウクライナ人の妻がいる、元拓殖大学客員研究員で、歴史作家の田中健之氏は、こう指摘する。
「ロシアの極東地域は80%はウクライナ人なんですよ。お父さんがロシア人、お母さんがウクライナ人とか、その逆とかの人も多い。ロシア人は必ずウクライナに親戚がいるし、ウクライナ人は必ずロシアに親戚がいる。だから、ロシアとウクライナがケンカするように煽り立てていったのは西側の政治の責任ですよね」
最悪のシナリオも警戒しないといけないという。
「劣化ウラン弾による攻撃には注意が必要です。実際、イラン、イラク戦争でも湾岸戦争でも使われていた。へたに経済制裁をやり過ぎるとEUが分裂しますよ。経済制裁は西側にとってもロシアにとっても、コロナで景気が悪い時に打撃を受け、大恐慌が起こる可能性がありますよ」(田中氏)
誰も望んでいなかった“戦争”。解決の糸口はまだ見えない。
(AERAdot.編集部 上田耕司)