羽生選手の言葉も印象的でした。フリーの後の会見で、「(五輪2連覇が)とても重かった」と正直な胸の内を語りつつ、「2連覇した人間として胸を張って後ろ指をさされないように、明日の自分が今日を見た時に胸を張っていられるように、これからも過ごしていきたい」と。
人間は、想定していなかったことが起きたときに、その人の真価が問われるのだと思います。私は羽生選手の言葉に、彼の「人間力」を感じました。神様はこの五輪で、羽生選手にプレッシャーとアクシデントという過酷な試練を与えました。でも彼は、それを耐え抜いた。
3連覇してほしかった。誰よりも彼自身がそう望んでいたでしょう。
今回の五輪が結果的に彼にとってよい経験になり、これからも羽生さんらしく生きてほしい。心からそう願います。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年3月7日号