茂木幹事長と岸田首相
茂木幹事長と岸田首相

 岸田首相の中には安倍政権の政調会長時代、国民へのコロナ支援策として自らが取りまとめた『所得制限付の30万円現金給付』案を、公明党に『所得制限なし10万円一律給付』へと瞬時にひっくり返されて顔を潰され、恥をかかされた苦い経験がある。

「岸田首相はもともと菅前首相とも関係がよくないので、茂木敏充幹事長、遠藤利明選対委員長に公明党との交渉を一任。菅前首相が公明党とのつながりが強いので、自ら出ないほうが得策という判断だった。党幹部は『公明党に離縁をちらつかせることで、これまで以上に有利な条件を引き出す狙い』と言い、岸田首相も『公明党だって台所事情は良くないんだろ』と容認していた。だが、逆効果となりすきま風が強くなっている」(自民党の閣僚経験者)

 互いに牽制しあっていた関係に「決定的なヒビ」が入ったきっかけは、遠藤選対委員長が自民党兵庫県連との面会後に放った「(公明党との相互推薦について)地元としてはかなり『不本意』だが党本部の考えに従う」との発言だという。

「相互推薦を『不本意』と表現したことを公明党本部及び創価学会は重大視。一気に主戦論に舵を切ることとなった」(公明党関係者)

 自民党と公明党の相互推薦のトラブルが顕著に現れたのは、兵庫の選挙区だった。2019年の参院選、兵庫県選挙区で当初、下馬評が高かった、自民党の加田裕之氏が立憲民主党候補に3万票差まで追い上げられ終盤、大苦戦。連立与党で過半数を狙い同じ選挙区から公明党の高橋光男氏も立候補した結果、兵庫県選挙区(定数3)で、公明の高橋氏は早々に2位で当選した。

 自民党の加田氏は最後までやきもきする展開となった。その時以来、自民党の兵庫県連は、公明党との相互推薦に対して見直すべきではないのかとの意見が相次いでいた。兵庫県の自民党県議はそう話す。

「公明党と相互推薦をすると、実際に自民党支持者がどちらに投じればいいのかと困惑している。前回の参院選もそうでした。昨年の衆院選でも自民党が公明党に譲っている小選挙区が兵庫県内には2つある。そこでは『なんで公明党ばかりに入れなきゃいけないのだ』と不満の声を何度も聞いた。相互推薦は選挙区の都合を勘案して、やればいい。今年の参院選では兵庫県選挙区は必要ない」

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遠藤選対委員長の発言の真相