
ところが小泉は、亀井との約束を100%裏切ってしまう。役職についても、亀井の言うことを全く聞かない。
それで僕は小泉に「あなたは首相になったけれども亀井を裏切った。人間的に大問題だ」と問い詰めた。そうしたら小泉が「確かに亀井を裏切った。だけど、日本の財政事情が最悪だ。これを良くするために抜本的な構造改革をしないといけない」と語った。
その改革のために組んだのが、構造改革論者の竹中平蔵だった。
痛みを伴う構造改革を思い切ってやるには、竹中と組み、亀井を裏切るしかなかったんだと。そして、「田原さん、権力とはそういうものだ」と言った。
小泉内閣とは何だったのか。彼が「自民党をぶっ壊す」と言ったのは、具体的には、自民党政権がそれまで続けてきた“大きな政府”を“小さな政府”にすることだったわけね。
要するに、大きな政府とは社会保障をしっかりと掲げ、規制をいっぱい設けて、あまり競争はさせない。小泉内閣が目指した小さな政府は、競争の自由。これは後に「新自由主義」と言われた。
◆小さな政府掲げ竹中と構造改革
米国だと、共和党が小さな政府を掲げる。ところが、競争の自由をやっていると、貧富の格差が生まれる。勝者は1割程度で、ほとんどが敗者。だから、民主党が政権を取ると、競争の自由をさせないために規制をいっぱい設ける。敗者を救うために社会保障をどーんと手当てした。すると今度は、経済がなかなかうまくいかなくなる。つまり、政権交代で小さな政府と大きな政府を交互にやってきた。
日本はもともと、大きな政府。小泉内閣になって初めて、小さな政府を掲げた。しかし、どうも日本人は、大きな政府が好きなのね。とくに、小泉に全面協力しながら裏切られた亀井は「小泉や竹中が日本を悪くした」などと言いまくったわけね。
一方、小泉は竹中と組んで、痛みを伴う構造改革をやるんだと踏み出した。ところがある時、竹中が困っている様子だった。