悪質商法の種類は豊富だ。あたかも行政の担当者のような身なりと口調で、消火器やガス警報器などの商品を売りつける「かたり商法」、「点検に来た」と言って事実と異なる情報で不安をあおり、工事を契約させたり、商品を売りつけたりする「点検商法」は、多くの人が知るところだろう。
信頼感を持たせて次々と高額な商品を購入させる「次々商法」や、注文していない商品を一方的に送り付けて、断らなければ買ったものとみなして代金を一方的に請求する「ネガティブオプション」(2021年7月以降は売買契約に基づかず送り付けられた商品は処分できるようになった)など。
日本消費者協会は、「相手の言うことをうのみにせず身近な人に相談し、すぐに契約をしないこと。『消費者力』を身につけることが必要です。『それってホント?』と疑いの気持ちを持ち、自分で調べようとすることが大事なんです。全国にある消費生活センターは、被害に遭う前にも相談できます。ぜひ、前の段階から相談してはいかがでしょうか」と注意を促す。
悪質商法に詳しい立正大学心理学部教授の西田公昭さんはこう話す。
「手口を知っているのは犯人だけであり、我々が知っているのは、被害が出て表面化されたものに過ぎません。だから、『私は大丈夫』と構えている人には、詐欺や悪質商法への対策をどれだけ考えてきましたか、と聞きたい。だます側は四六時中だますことを考えて、どうやったらうまくいくか試行錯誤している『プロ』。我々『素人』は太刀打ちできません。根拠のない自信を持っている人ほど危険。むしろ『大丈夫かな』と自信のない人のほうがいいかもしれません」
そして、いまだに被害が多い「オレオレ詐欺」。これもまずは疑ってかかることが重要だが、NTTグループが固定電話利用者向けに始めた特殊詐欺対策のサービスがある。録音された音声をAIが解析し、詐欺だと疑われた場合は、契約者本人やあらかじめ登録した人に注意喚起の電話やメールが入るという仕組みだ。利用料は月額440円(別途初期費用8800円)。
まずは不審に思ったら、家族や友人、消費生活センターなどに相談すること。局番なしの188(いやや)にかければ、最寄りのセンターへと案内してくれる。前出の西田さんはこう助言する。
「怖いとか、不安とか、うれしいといった感情に、お金の話がセットで来た時にアラートを発せられることが大切です。そんな時は自分で判断せずに、周囲の助けを得ましょう」
(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2022年3月11日号