高齢者が不審な来訪者の話に誘導される理由を、全国消費生活相談員協会の担当者はこう語る。
「予期せぬ勧誘に弱い高齢者も多いです。在宅時間が長く、固定電話の保有率も高い。情報も少なく、コロナ禍で閉じこもりがち。訪問者があるとうれしくなってしまうのか、電話にも訪問者にも対応してしまう」
優しくされると断れない。被害に遭っても相談する人が近くにおらず、「家族には迷惑をかけたくない。自分に非がある」と背負い込む。その結果、詐欺事件として発覚が遅れることもあるという。
次は、こんな商法だ。
「最近、悪質化しているのは、訪問買い取りです。妻の形見の高価なアクセサリーを1万8千円で買い取られたという80代の方もいました。断りたくても、怖くて言えなかったそうです」(担当者)
訪問買い取りとは、自宅に業者が訪れ、物品を買い取るものだ。
今は「終活」のはやりもあってか、身辺整理の一環で利用する人も多い。悪質業者が貴金属などを強引に買い取るトラブルもある。当人が満足する妥当な金額であれば問題ないが、希望しない買い取りはきっぱり断りたい。万一契約を交わしてしまっても、その日を含む8日間はクーリングオフ(契約後ある期間内であれば解除)できる。
前出の全国消費生活相談員協会の担当者が「高齢者に限らず注意が必要」と注意喚起するのは、トイレの水漏れなど暮らしのトラブルだ。
関東圏に住む男性(40代)は、深夜に自宅のトイレが詰まり、便器から汚水があふれ出したため、ネットで修理業者を検索。「最安値(460円~)」に目がとまり、業者に依頼すると1時間後には作業員が到着し、まずは薬剤で汚物を溶かす処理で3千円、続いて高圧ポンプを使って5千円。それでも終わらず、便器を外し(2万5千円)、電動ドリルで汚物を押し出す作業(10万円)。合計の請求額は、「作業衛生費」が追加されて計15万円。
国民生活センターによると、こういったトラブルは年々増えている。トイレ修理に300万円超の請求額という相談は、前年度に10件以上あったという。