2004年、教育困難校だった都立水元高校に校長として着任し、3年間で中退率を激減させた栗原卯田子先生。その後、中高一貫校になったばかりの都立小石川中等教育学校、そして私立の伝統校である成城中学校・高等学校の校長を歴任。学校は違っても、生徒をよく観察し、生徒の意見に耳を傾けながら自分の考えをはっきりと述べる”卯田子流”で、数々の難題と向き合ってきた。2021年に退職し教師という重責から離れたが、栗原先生はやはり「先生」と呼ぶのが一番ふさわしい。連載第2回「「制服か私服か」で校内が真っ二つ、校長が下した決断は 名門・都立小石川中高一貫化の軋轢と改革」に続く第3回は、伝統ある私立男子中高一貫校を復活させた「成城中学高校編」。
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8年間校長を務めた成城中学校・高等学校(東京・新宿区)を退職した2021年3月、正門の桜に「うたこ桜」のプレートが掛けられた。プレートには「女性初校長として成城に赴任されて毎朝校門に立たれました その姿を残したく思います 桜の記憶として……」の小書きが添えられている。2013年に赴任して以来、ほぼ毎朝正門に立って生徒を迎えた栗原先生への、教職員からの贈り物だった。
成城中学・高校は1885(明治18)年に陸軍士官学校・陸軍幼年学校への予備校として創立された。
「日本が近代国家になるという背景もあり、たまたま軍人志望の少年養成から始まりましたが、新しい日本のリーダーを育てていくために創立された学校だといえます。そんなすごい伝統を持った学校ですが、着任前は志望者が減少を続け、低迷から抜けきれないでいました」(栗原先生、以下同)
理事長から託されたのは「成城を元気な学校にしてほしい」という依頼だった。男子校の女性校長は、全国的に見ても極めてめずらしい。当の栗原先生さえ、当初は共学の「成城学園」と勘違いしていたほどだった。
「ただ、今までも女性を意識して教師をしてきたことはありません。人を育てるのに男女は関係ない、男子校でも、それは同じことだろうと思いました」
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