その夏開かれたプログラムに参加した生徒は100人に及んだ。来校した20人のアメリカの学生とグループに分かれ、ディスカッションやグループワークをおこなった。
「この学生たちをホテルに泊めておくのはもったいない。参加者の中から、協力してくれる家庭を募ってホームステイを受け入れてもらいました」
エンパワーメント・プログラムは成功裏に終わり、翌年からは成城を代表するグローバル教育として、正式なプログラムに昇格している。
後日、プログラムのきっかけを作った生徒が、にっこりほほ笑んで話しかけてきた。
「小石川に行けなかったのは残念だったけど、成城に入学して、ぼくはよかったです」
「エンパワーメント・プログラム」は、生徒を外向きに変えた。翌日から中学入試が始まる1月末には、こんな出来事があった。
「学校改革の一つとして入試を2回から3回に増やしたのですが、ひとつ余分に問題を作るわけですから、先生方の負担も大きい。翌日からの入試本番を控えて、緊張も高まっていたところに、高校生が校長室にやってきました」
訪れたのは高校1年生数人。「明日から僕たちだけでアメリカへ行くことになりました」と報告にやってきた。ホームステイで一緒に過ごしたカリフォルニア大学バークレー校の学生から「全部面倒を見るから、今度は君がアメリカへおいで」と誘われ、入試期間中の休みを利用して友だちと一緒に行くことにしたのだという。
「校長室にあった成城グッズをかき集めて、あなたたちは学校の代表としてこれを持っていきなさいと、送り出しました。こちらが想像もしなかったことをやるから、男の子って本当におもしろい(笑)。疲れも吹き飛びましたね」
◇ ◇
成城の伝統行事の一つに、1925(大正14)年から続く臨海学校がある。中1生全員と、中学生を指導する補助員として高2生が50人ほど参加する。中学生は泳力に応じて段階別の班に分けられ、一番上のクラスは90分の遠泳にチャレンジする。隊列の先頭と後ろ、両脇を高2の補助員で固めて、その間を中学生が泳ぐ。先頭や周りの補助員たちは隊列を見守りながら、中学生がついてきているか、異常はないか、確認する。
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