世界各地で上演されている名戯曲で、ベテラン俳優を演じる勝村政信さん。年齢を重ねることは、俳優としての“ストック”を増やすこと──。稽古中も、不安定な自分を面白がる日々だ。
【前編/勝村政信「殴って辞めてやる!」 それでも蜷川幸雄さんの稽古に耐えた理由】より続く
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稽古中の舞台「ライフ・イン・ザ・シアター」は、現代アメリカを代表する劇作家デヴィッド・マメットの戯曲で、77年のシカゴでの初演以来、ブロードウェーをはじめ、世界各地で上演され続けている。勝村さん演じる劇団の看板俳優であるロバートは、高杉真宙さん演じる新人のジョンに舞台についてのアドバイスをする。やがて月日は流れ、順調にキャリアを築いていくジョンに対し、ロバートは集中力や記憶力の低下に苦しめられ……というストーリーだ。
「日本での初演のときにロバートを演じたのが石橋蓮司さんで、ジョンが堤(真一)くんでした。蓮司さんは、蜷川(幸雄)さんの劇団の直の先輩なんです。まさに蓮司さんにピッタリの役です。僕なんかが演じるには、もう少し老いてからのほうがいいんじゃないかとは思ったけれど、せっかくこのタイミングでお話をいただいたわけだし、高杉くんとも縁を感じた。最初に共演したとき、彼はまだ中学生でした。久しぶりに会ったのが、2年前の映画『バイプレイヤーズ』のときで。立ち話はしたけれど、30年来の仲間が大勢いすぎて、まるで同窓会のようで、みんなと話すことに夢中になってしまった(笑)。あらためて話がしたいと思っていたことも含めて、いい機会かなと」
稽古の最中、演出の千葉哲也さん、共演の高杉さんの3人で、演じることや舞台について、いろんな話をしている。
「舞台上では、ちょっとしたことで自分が自由になれることがわかっている。若い人たちも、早く自由に泳げるようになるヒントが手渡せたらな、と」
自身を、新劇とアングラと小劇場のハイブリッドと定義する勝村さんが後輩に伝えることの一つは、周囲を観察して、感情や動きを“ストック”することだ。