一見ハイスペックイケメンだが、「女の子は右側だ。半歩後ろの方が好きかな」などとめんどくさい注文ばかりつける男。
娘たちがそんな男に振り回されたり、あきれたり、引導を渡す様子は、ショートコント集か4コマ漫画の単行本をさくさく読むような楽しさだ。
そしてそんなダメ男たちのダメの背後に、彼らが育ってきた家庭が見える。冷や中男が求めていたのは母ちゃんが作る味だし、イケメンモラハラ男の家族は全員、ホームドラマみたいな嘘くさい笑顔を浮かべている。
伊藤家の食卓は丸いちゃぶ台。母さんの「行ってらっしゃい」は「行ってわっかない」などバリエーションのクセが強い。虫を退治してくれるハエトリグモは殺さない。その家ならではのお約束。
源太郎は言う。「誰にも変なところはある。それが『よい変』なのか『悪い変』なのか。『直る変』か『直らない変』か。それとも『大切にしておきたい変』なのか」
ドヤ顔父さんに「ハンサム!!」とツッコむのは、伊藤家の「大切にしておきたい変」。ふと自分の実家の「変」も数えあげたくなる「おい東海テレビ(日本映画放送と共同製作)!!」なハンサムドラマであったのだ。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2022年3月11日号