高齢者のためのNPOは、坂道を高齢者が下る試みを行った。緩やかな坂にビニールを敷き、その上に厚手のクッションを重ね、坂下りをしてもらう。あまりに大胆な企画に高齢者がけがをするのではないか、怖くて尻込みするだろうとの声が上がった。しかし、実際は坂下りを1度でやめる人はなく、2度、3度と滑りたがった。ボランティアが何度も試して、これなら大丈夫というところまで改良を重ねた努力が実った。
高齢者の夢をかなえようとする団体もある。スーパーマーケットが設置した箱に夢を書き入れてもらい、店内につるす。104歳女性の「逮捕されてみたい」との希望に目をとめたのは地元警察だった。老人ホームに赴き彼女に手錠をかけ、「これまで善良に生きてきたのが容疑です」と告げてパトカーに乗せ赤いランプをつけて周囲を走った。彼女は、「なんてエキサイティングだったでしょう」と大喜び。英国の孤独対策にお金はいらない。アイデアを出し合い、草の根の活動で孤独撲滅に立ち向かう。コミュニティーから「孤独な人」を出さない。そんな信念が伝わってくる。
※AERA 2022年3月7日号