新型コロナウイルスの表面にあるたんぱく質を標的にした中和抗体は、感染によってできるものより、ワクチン接種によって得られるものの方が多いとみられる。ファイザー社やビオンテック社などがワクチンが承認される前に実施した臨床試験では、1回50マイクログラムの接種を2回受けた人の中和抗体価は、感染した人の中和抗体価よりも3.6倍高かった。詳細は、科学誌「ネイチャー」に20年9月に掲載された論文で紹介されている。

 感染経験があると、感染経験のない人よりも、ワクチンによって強い免疫ができる。米マウント・サイナイ大学などが2021年4月に医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した報告では、ファイザー社製かモデルナ社製のmRNAワクチンを接種した110人の調査では、感染経験者のワクチン完了後の中和抗体価は未感染者の約6倍高かった。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2022年3月14日号より抜粋