林:なるほど、それで吉本の養成所に入ったんですね。
兼近:そうです。どうしたら書けるんだろうと思いながら入ったんですけど、お笑いが楽しすぎて没頭しちゃって、気づいたら2年、3年たってたんです。忙しくなってきて、書くタイミングがなく過ごしていたあるとき、ふと「俺、そもそも書きたくてお笑いやってるのに、何してるんだろう」って気づいて。それからちゃんと書き始めた感じです。
林:学生時代もあまり本を読まなかったんですか。
兼近:まったく。
林:江國香織さんの小説が好きってどこかで読みましたけど。
兼近:それはだいぶ大人になってからというか、東京に出てきてから本屋さんとか古本屋さんに顔を出して、よくわかんないけど適当に取った本がたまたま江國さんの本だったんです。でも、読んでみたらすごくいいなと思いましたね。
林:江國さんは文章が研ぎ澄まされたように美しくて、比喩も多い方ですけど、ほかにも好きな作家を見つけられました?
兼近:穂村弘さんという……。
林:歌人の方ですね。
兼近:あの方のエッセーを読ませていただいたときに、ちょっと似てる部分があるなと思って。生きてきた環境も違うし、読んだ当時は社会に出たこともなかった僕とは、似てるわけないんですけど、考えてることとか、自分の中で思う気持ちが重なって見えたときにすごくうれしかったですね。こんな年上の人と俺が同じようなことを考えて生きてるんだと思って。
林:江國さんといい、穂村さんといい、文章が非常に洗練されている方ですけど、それを読んでも、兼近さんの文体はほとばしるような感じになるんですね。
兼近:ああ、確かに。寄れないというか、寄らないかもしれないですね。まねっ子してそれっぽい感じにするのは違うなって思ったんです。
林:まねはしないまでも、いろんな作家の本を読んで、その経験がだんだん堆積されていって、その中から腐臭みたいなものが出てきて、それがやがて自分のオリジナルになっていくんですよね。いずれは又吉さんみたいに賞(芥川賞)をとりたいって思ってます?