こうしたNHOの姿勢について専門家はどう見るか。キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹は「信じられない対応だ」とした上で、こう語る。
「高齢者や妊婦など手のかかる患者を受け入れないという姿勢が伺える。NHOはコロナ対応の先頭に立つことが求められていますが、その意識がない。人手が足りないというのであれば、NHOや尾身会長が理事長を務める地域医療機能推進機構など公立医療機関が広い地域まとまりながら連携し、各地から人を集めればいい話です」
さらに松山氏は、今年2月の日本とドイツの新規感染者数と死亡者数に注目をする。ドイツは感染者489万人で死者は4970人だった。日本は感染者245万人とおよそドイツの半分だが、死者はドイツとほぼ同じの4841人だった。松山氏はこう言葉をつなぐ。
「この数字は日本では高齢者やリスクのある患者の命を助けられなかったことを意味しています。NHOなどの公立医療機関の消極的な姿勢は私たちの命に関わる話で、国民はもっと怒るべきだと思います。今の状況では、第7波でも助けられる命が助けられなくなる。首都直下型地震など大災害が起きれば、なおさら対応はできないでしょう。第7波でも同じように多数の命が失われれば、岸田政権は選挙で大敗する可能性もあるのではないでしょうか」
改めてNHOや公立医療機関の姿勢が問われている。
(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)