■AIとビッグデータで医療は大きく転換する

 このコロナ禍でオンライン診療が必要に迫られたものの、従来の診療に代わるには不十分。医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)はこれからが山場だ。奥医師によると医療ビッグデータの活用は準備期間が終わり、ホップ・ステップ・ジャンプのステップに踏み出したところ。約3年後の25年ごろから本格化する見通しだという。

「あらゆる場でビッグデータが活用されます。創薬では、以前は『仮説検証型』といって、まずは原理について仮説を立てるのが主流でした。それがこれからは、効く理由や理屈を考えるプロセスを飛ばして、データの分析結果から新たな薬を見つける『発見型』の創薬になります」

■薬や内科的治療で大半が治せるように

 診療の多くも「人工知能(AI)」に置き換わっていく。患者のからだの動きや声、においなどを瞬時に解析、診断できるようになり、AI制御のロボットが、人間の医師ではできないような動きで手術をするように。

「いまはまだ医師の経験や手先の器用さ、目のよさなどが治療の質を決定づける面があります。それがビッグデータとAIのコンビネーションにより、人間の五感、能力を超えた治療が可能になるのです」(奥医師)

 世界はいま、「エピゲノム」の研究に熱い視線を注いでいる。

 遺伝子変異を起こさせる要因であるエピゲノムの解析が進めば、病気の多くが予防できるようになると考えられている。発症しても、進化した薬や内科的治療で大半が治せるので、手術はごく特殊なケースだけ。そんな未来が現実味を帯びてきた。

(文/伊波達也)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

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