兼近大樹さん(右)と林真理子さん[撮影/小山幸佑、ヘアメイク/高丸瑞加、富樫真綾(Ari・gate)、スタイリング/矢羽々さゆり]

兼近:コワいというか、人とまともに会話できなかったんです。奇跡だと思います。たまたま東京に出てきて、いろんなものを見て、いろんなことを教えてもらって座ってお話ができるようになったんですよね。もっと昔は、人と二人きりで座って何分もお話するなんて無理でしたね。

林:この本を読んで、これだけの材料があったら、何冊も書けるんじゃないかと思いましたよ。この本の中にたくさん宝が詰まっていて、たとえば、ネタの宝庫みたいなお笑いの養成所のこととか、泣いちゃうような北海道でのヒリヒリした恋愛、若いときならではの出会いと別れ、傷つけ方とか、きっと書けると思う。それを少し臭わせてるところがあったと思うし。

兼近:恋愛の部分ですね。この本に関しては、恋愛に重きを置いていないキャラクターを書こうと思って、それで書かなかったんですよ。それと、養成所のことは、小説の主人公に経験させるよりも、兼近大樹という芸人がエッセーで書いたほうがおもしろいと思ったんですよね。僕、小説を書きながら思ってたんですよ。「主人公のこいつより、俺のほうがおもしろいな」って(笑)。

林:なるほど、そういうことだったんですね。でも、小説に限って言えば、作家って書き続けないと作家にはなれないから、書き続けてくださいね。2冊目、3冊目、楽しみにしてますよ。

兼近:ありがとうございます。こんなに褒めていただいて、俺、ちゃんと書けるかもしれないって思い始めました(笑)。

林:その前にパソコンを覚えたほうがいいかもしれないけど。

兼近:アハハハ、そうですね。電源の入れ方はわかるかな、ぐらいの段階なんで(笑)。

(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)

兼近大樹(かねちか・だいき)/1991年、北海道生まれ。2013年、吉本興業の養成所NSC東京に入学。17年、りんたろー。とともに「EXIT」を結成。18年、ヨシモト∞ホール、ルミネtheよしもとで単独ライブを開催、YouTubeに「EXIT Charannel」を開設。19年、「よしもと男前ブサイクランキング」男前ランキング1位。20年、公式ファンクラブを開設。複数のテレビ番組にレギュラー出演するほか、音楽活動やブランドのプロデュースなど、活動の幅は広い。昨年、自身初の小説『むき出し』(文藝春秋)を出版した。

週刊朝日  2022年3月18日号より抜粋

[AERA最新号はこちら]