申氏は現在の日韓関係を「韓日が互いに敬遠する現象が起きている。韓国は日本を軽視し、日本は韓国を無視する傾向が目立つ」と語る。李氏も「隣国である韓日両国がお互いに対する重要性を軽視することは誰の助けにもならない」と指摘する。

 こうしたなか、尹氏が当選した。申氏は尹氏の勝利について「文政権5年間の国政失敗に対する国民の審判だ。尹氏は検事総長時代に文政権と全面的に対立した人物で、国民的な人気も高い。政治経験は少ないが、有能な専門家を起用し、小さな政府構想を訴え、合理的な路線を取るだろう」と語る。

 李氏も「一言で言えば、Back to normal(正常への回帰)となるだろう。韓米同盟を確固とし、日本との関係を改善し、自由民主主義、市場経済に基礎を置く価値外交にも相当な努力を傾ける。北朝鮮の核開発問題には断固対処し、中国との友好関係を維持するために最善を尽くす」と予測する。

 ここで問題となるのが、野党に転じる「共に民主党」の存在だ。10日現在、韓国国会(定数300)で、同党の議席数は172。与党になる「国民の力」と「国民の党」を合わせた議席113を圧倒。申氏は「巨大野党の協力なしには、立法が難しい。大統領選での激しい批判合戦からみて、新政権は、困難な国政運営を強いられるだろう」と語る。

 申氏は、日韓関係の懸案の一つである徴用工判決の解決のためには特別立法が欠かせないと指摘する。韓国では18年秋の大法院(最高裁)判決で、日本企業に賠償を命じる判決が確定した。一部は被告企業の韓国内資産が差し押さえられ、売却命令も出ている。日本は日本企業に損害が出た場合は報復措置を取る方針で、そうなれば、日韓関係は改善の機運を失いかねない。

■両首脳の信頼関係が鍵

 日本政府関係者は「まず、徴用工判決問題で日本企業に被害が出ないことと、15年の日韓慰安婦合意を元に戻すことが必要。それが実現しないと、日韓関係を前に進められない」と語る。

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