イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 米欧はロシアに対して経済制裁を強化しているが、プーチン氏はこうした経済制裁の強化を「宣戦布告のようなものだ」と述べ、強い不満を表明しているようだ。

 バイデン米大統領は、経済制裁を強化するだけではプーチン氏の姿勢を変えられない、とわかっているはずである。プーチン氏の軍事侵攻を止めるには、軍事力で対抗することだとわかっているが、バイデン氏がそのような姿勢を示せば、米国民から総攻撃を受けてバイデン政権は崩壊するはずである。

 さらに、バイデン氏を困惑させているのは、トランプ前大統領の共和党が厳しいバイデン批判を繰り広げていることだ。プーチン氏が強気の発言を続けているのは、アフガニスタンからだらしのない撤退をするなどバイデン氏が意欲を失ったとしか判断できないため、などと批判されている。

 インフレによって米経済が悪化し、バイデン氏の支持率は40%を切っていた。このままでは秋の中間選挙で民主党は共和党に敗れるのではないかとの見方が強まっているが、もし民主党が大敗すれば、それはバイデン政権の崩壊につながり、それを最も期待しているのがプーチン氏であろう。

 バイデン政権が倒れれば、トランプ氏が政権を握る。トランプ氏はプーチン氏と大の仲良しだからである。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2022年3月25日号

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