北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

 アジア圏を牽引してきた韓国の#MeToo運動は、あまりにも成功したということなのかもしれない。成功の後には必ずバックラッシュが訪れる。韓国のバックラッシュの規模の大きさや激しさが現実になるのはこれからのことかもしれないが、隣国のフェミニストとして見守っていきたいと思う。

 ちなみに日本のバックラッシュは2000年代に強まった。都民としては、先日亡くなった石原慎太郎氏が都知事になったことが、日本のバックラッシュを大きく進めたと思っている。彼が都知事に就いてまずしたことの一つが、女性財団を廃止し、女性センターを都の直営にすることだった。ジェンダーの専門家やフェミニストらが丁寧に運営してきた女性財団が廃止されたことで、例えば都の女性センターでフェミ的な企画がほとんど通らなくなった。

 私は1990年代、女性財団が運営していた東京ウィメンズプラザによく通っていた。図書館には歴史的なものから現在のものまであらゆるフェミ本がそろえられていた。セクシュアリティーに関する刺激的な企画も多く、女性をエンパワーメントするワークショップなども豊富だった。

 そういう女性センターをまず、石原氏はつぶした。都の直営にしたことで、フェミのフェの字も知らないオジサンたちが運営をし、フェミ的な企画がほぼ通らなくなり、手芸とか絵画教室というワークショップが増え始めた。気がつけば、そこは女性たちが集う場所というよりは、近所の会社の人たち(多くはオジサン)がうたたねするような場所になっていき、私も次第に足が遠のいた。

 石原氏は徹底したフェミ嫌いだった。「ババア発言」もそうだが、当時、勢いに乗っていた石原氏の発言は改めてひどい。

「今度男女共同参画社会というのを先取りして東京都で条例をつくるという。いいかげんにしてくれよと思った」「要するに男が女をいじめちゃいかんということだろう」「女も男をいじめちゃいかんと入れといてくれ」(正論2000年3月号)という発言が当時の雑誌に残されているが、この発言は、韓国の「国民の力」の代表や次期大統領と全く同じメンタルだろう。女ばかりが被害者ぶるのはおかしい、という考えだ。

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当時の2ちゃんねるで誹謗中傷を受けた