ウクライナへの侵攻を正当化する主張を繰り返すプーチン大統領。過去のインタビューをもとに変わっていない信念や変化した人格を分析する。AERA2022年3月21日号の記事を紹介する。
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「ウクライナの真の主権は、ロシアとパートナーシップがあるからこそ可能である」
昨年7月に発表した論文でこう述べたプーチン氏。
だがプーチン氏はかつて、実際に今やっていることとは正反対の考えを述べたことがある。それは00年、プーチン氏が大統領選に臨む直前に行われたインタビューだ。
1956年にハンガリーの民主化運動にソ連軍が介入して鎮圧した「ハンガリー動乱」や、68年に当時のチェコスロバキアで進められた改革運動「プラハの春」をソ連軍主体のワルシャワ条約機構軍がつぶした歴史についてインタビュアーに問われたプーチン氏は、以下のように答えていた。
「私が見るところ、これらは大きな過ちだった。私たちが今、東欧でロシアへの憎悪に直面しているのは、こうした過ちの結果なのだ」
まったく、今のプーチン氏に読んで聞かせたくなるセリフである。
もちろん、このインタビューは、プーチン氏にとって初めてとなる大統領選に向けたキャンペーンの一環だったという背景は押さえておく必要がある。
とはいえ、外国への武力による介入が憎悪しか引き起こさないことを十分理解していたことを、プーチン氏の発言は物語っている。
このインタビューでは、長期政権についての発言も見逃せない。82年から98年まで、西ドイツと統一後のドイツを16年にわたって率いたヘルムート・コール氏が、引退後にヤミ献金疑惑に見舞われたことについて、プーチン氏は皮肉っぽく答えていた。
「1人の指導者が16年も続けば、ドイツ人のような落ち着いた国民でもうんざりする」
00年に大統領に就任したプーチン氏は、一時首相の座に退いたものの、すでに22年間、国を率いている。ロシア国民に限ってうんざりするはずはない、とでも考えているのだろうか。