横浜市にある社会福祉法人が運営する認可保育園が3月末で閉園する。昨年、市から委託費数千万円を不正に受給していたことが発覚。市が返還を求めたところ、運営資金のめどが立たないことを理由に急に閉園を決めたという。保育士らは全員解雇されるが、大半は数カ月前に正社員として採用された保育士ばかりだった。「こんな理不尽な扱いが許されるのか」。想像すらしなかった“クビ通告”に保育士たちのショックと憤りは止まらない。
【図】東京都の監査で発覚した保育園の「不適切な支出」の一覧はこちら
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横浜市緑区にある、社会福祉法人和徳会が運営する認可保育園「長津田幼児アカデミー」。1月7日の午後、園長が50代の女性保育士Aさんら2人のそばに来て、唐突にこう告げた。
「3月で閉園するから、他の保育士たちにも伝えておいて」
驚いたAさんが事情を問いただすと、「横浜市がいじめるからお金が払えない」などと答え、転職活動を始めるように促してきたという。
Aさんは昨年夏に園の正社員募集を見つけて応募し、9月に入社したばかり。Aさん同様、解雇される保育士のほとんどが正社員採用からわずか数カ月しかたっていない。
園に就職後、教材の数がやたらと少なかったり、コピー用紙やトイレットペーパーなどの備品を保育士たちが自腹で購入する慣例が職場にあったため、経営状態が良くないことはうすうす感じていた。だが、閉園理由をきっちり説明しない園長の態度に疑念を抱いたAさんらが、委託費不正受給の事実を知ったのは、閉園通告の後のことだ。
「不正に受け取るお金をあてにして、長く運営を続けていたのではないか」(Aさん)
市によると、昨年4月に園が不正をしているとの情報が寄せられ、立ち入り調査などを開始。その結果、少なくとも2016年度以降、在籍する保育士の勤務日数の水増しや、すでに働いていない保育士が勤務したように記入し、計3400万円を不正に受給していたことが発覚した。
市の聴取に対し、園長は記入ミスだったかのようにほのめかす一方で、明確な説明をしていないという。