江川医師のもとには、他院で治療がうまくいかなかった患者も多く訪れる。副作用でピルの服用が続けられなかった人や、ピルへの誤解や先入観により抵抗感をおぼえる人もいるという。
「使いたくないという人には、まずその理由を伺います。薬について正しく理解することで気持ちが変わる人も。また、吐き気が心配な人には、最初に吐き気止めの薬で予防したり、ピルの種類を変更したりすることで治療がうまくいくこともあります」(江川医師)
■生活を整えることも大切な治療の一つ
体質・病歴などにより低用量ピルを使えない人は一定数いる。その場合は漢方薬など、ほかの治療薬を検討する。精神症状が強い場合は、抗うつ薬(選択式セロトニン再取り込み阻害薬・SSRI)を、月経前2週間だけ服用する「間欠投与」がとられることもある。
「抗うつ薬に不安をもつ人もいますが、月経前だけ適切に使うことで、とても楽になる患者さんも多いです」(小川医師)
治療では、生活改善も重要だと両医師は口をそろえる。セルフケアとして、適度な運動、十分な睡眠、禁煙、食生活の見直しなどが挙げられる。なかでも食事は大切だ。
「月経前に甘い物や刺激物がほしくなる人は多いですが、血糖値の大きな変動はイライラを増幅させます。血糖値が変動しにくい未精製の炭水化物や、気分を安定させる『セロトニン』のもとになるタンパク質をしっかりとりましょう」(同)
(文・出村真理子)
※週刊朝日 2022年3月25日号