PMSの治療は、生活指導と薬物療法、カウンセリングなどの心理療法が中心となる。月経中に強い腹痛や倦怠感などの症状が出る「月経困難症」と併発することがあり、あわせて治療することが多い。診察では月経について詳しく聞き、子宮内膜症などの病気がないかも確認する。
「患者さんそれぞれで困りごとは異なるので、症状、気持ち、生活の様子などをしっかり聞きます。からだと心と生活をつながったものとして、患者さんの全体をみることが大切でしょう」(江川医師)
薬物療法では「低用量ピル」が最もよく使用される。ピルというと避妊薬のイメージがあるが、低用量ピルは含まれる女性ホルモンの量を抑えているため副作用が少なく、月経困難症の治療薬として保険適用もされている。
■月経数が多いことが病気や不調の原因に
低用量ピルを服用すると、含まれる女性ホルモンの作用により排卵が抑えられ、ホルモンの変動が少ない状態になり、PMSの症状が抑えられる。
「近年では長期間服用が主流になりつつあり、最長で120日間連続服用できる薬もあります。月経回数を減らせればPMSの回数も症状も減り、快適に過ごせる日が増えるのです」(小川医師)
ピルにネガティブなイメージがある人や、「そんなに長く月経を止めて大丈夫?」という心配をする人もいるかもしれない。しかし、そもそも現代女性は月経が多すぎるという実態がある。昔は一人の女性が産む子どもの数が多く、妊娠・出産回数が多い、つまり月経がない期間が長かった。
「月経の回数が多いことで、子宮内膜症などの病気が増えているという問題もあります。月経を止めることは悪いことではなく、むしろ子宮内膜症やPMSなどの病気を改善することにつながります。将来の妊娠への影響もありません」(同)
低用量ピルは、月経がある女性であれば10代から閉経前まで使用することが可能だ。一方で、薬剤なので副作用が生じることもある。吐き気、頭痛、不正出血などは一般的に使い始めに起こりやすく、服用を続けるうちに治まることが多い。なお、まれに血栓症が起こる可能性があり、喫煙者、肥満、高血圧、片頭痛がある人などは注意が必要となる。