■振り切って演じた

――作中で演じたのは、超ナルシストのロボットデザイナー・林原だ。強烈な個性は作品にスパイスを与えた。

京本:三木孝浩監督との顔合わせの時に、「大げさにナルシストをやってもらいたい」と言われ、「林原ならではのポージングを考えてほしい」という宿題をいただきました。悩んだのが、現実にはそういないキャラクターを、二宮くんや満島ひかりさんといったリアリティーある演技をされる方々と同じ場面にいても、違和感ないように演じるさじ加減です。“大げさ”と“嘘っぽい”は紙一重でしょう。林原はコメディー担当でもあるのかなと考え、くすっと楽しんでもらえたらという気持ちで、最終的にはかなり振り切って演じました。

――多忙な日々が続く。癒やしは、愛犬と過ごす時間だ。

京本:息抜きのためにゲームをしても僕にとってはその場しのぎにしか感じられなくて。本当に追い込まれている時は特に、愛犬と過ごす時間が一番リフレッシュできます。うちの犬は夜はあまり歩きたがらないので、抱っこをして家の周りをほんの1、2周歩くだけなんですが、それだけで癒やされます。

――舞台はライフワークのひとつだ。だが、「何度立っても気持ちの大半を恐怖が占める」という。どう向き合っているのか。

京本:心が折れた瞬間に、クオリティーも体調も悪い方に流れていくと思います。だから、自分を信じることが何よりも大切だと思います。ある意味、自分をだましながら強気でいくことで何とか持たせられているところがあります。同時に、カンパニーの方々の優しさや大変さをキャッチできる余裕も持っていたい。

■絶対にあきらめない

京本:ただ、いまも「自分を信じなくてはいけない」と言っているということは、まだ信じきれてない部分があるということだとも思うんです。もし、「声が裏返ってしまうかも」と不安に感じる場面があるとしても、瞬時に「僕は絶対できる」と強気に変換できれば、ある程度の問題は回避できるのかもしれません。

 不安や課題はたくさんありますが、ではあきらめるかというと、それは絶対にない。絶対に僕は8月2日に「流星の音色」のステージに立つ。必ず、立つんです。ということは、いま何をするべきか。そう逆算して、一日一日時間を無駄にせずに役と向き合っていきたい。全力で向き合わないと学べるものも学べないで終わってしまうので、毎日、「今日は絶対にこれを獲得する」という目標を掲げて、ひとつひとつクリアして、本番はもちろん、千秋楽のその先まで、気持ちをつなげていきたいと思っています。

(ライター・小松香里)

AERA 2022年8月1日号