――これまで、「役を演じるのは自分の要素をゼロにすることだが、音楽は100%自分を出すこと」と位置づけてきた。今回求められたのは、役になりきったうえで、音楽を作ることだ。

京本:自分の感情ではなく、僕が演じるリーパという人物の言葉を書くとは、どういう感じなのか、書き出してみるまではまったく想像がつきませんでした。けれども、リーパの心情が自分の中で定まるとブーストがかかったように言葉がすらすら出てくる瞬間があったんです。自分ではないからこそ、「ここでかっこよく言いたい」や「キャッチーなフレーズを使いたい」といった発想を超えて、勢いよく書けたところがありました。「リーパはきっとここで『好きだ』と言いたいんだろうな」と思ったら、そのまま「好きだ」を書けばいい。リーパを俯瞰(ふかん)して、「この言葉が相応(ふさわ)しい」という判断ができました。

■悩みを共有したい

京本:僕が「詞を書きたい」と思う時は、気持ちがまとまらなかったり、吐き出しようのないものを抱えた時だということも改めて意識しました。自問自答を歌詞にしているというか、だからメモにはネガティブなことが書かれてることも多いんです。

 きれいな言葉で感情の出口を作ることも時には大切ですが、悩みや苦しみを共有したいという気持ちで曲作りをしてもいいんだと思っています。その曲を誰かが聞いて、「気持ちがわかる」と感じて、その人が救われることもきっとある。

 例えば、2017年にコンサートで歌った「SUNRISE」という曲は映像化もされてないんですが、いまだに「また歌ってほしい」という声をいただくんです。いつかしっかりとした作品として仕上げられたらいいなと思っています。悩んでいるからこそ、生まれるメッセージを大切にしていきたいです。

――アイドルとして俳優として音楽家として活動の幅を広げるなか、8月11日公開の「TANGタング」で本格的に単独での映画出演を果たした。主演は事務所の先輩・二宮和也だ。

京本:ドラマ「流星の絆」もそうですが、二宮くんの作品はこれまで視聴者側にいて、まさか対面でお芝居をさせていただく日がくるとは思いませんでした。緊張もしましたが、僕がやりやすい空気を作ってくださり、とても助かりました。フラットですてきな方だと改めて感激しました。映画は日常的に観ますし大好きなので、「TANG タング」はこの世界にもっと飛び込んでいきたいという意欲に火をつけてくれた作品になりました。

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