
米国を筆頭に西側諸国がロシアに対する経済制裁を強化している。だがその反作用は大きく、日本もひとごとではすまされない。AERA 2022年3月28日号は「ウクライナ侵攻」特集。
【図】ロシアの主な貿易相手国 日本からは自動車や機械の輸出が大半を占める
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「米国はロシア経済の大動脈を標的にしている」
国際銀行間通信協会(SWIFT)システムからの排除など相次ぐロシアへの経済制裁。バイデン米大統領は3月8日、ロシア産の原油、液化天然ガス(LNG)、石炭などの輸入を全面的に禁止する大統領令に署名、即日発効した。英国も同日、輸入を年末までに段階的に禁止すると発表。カナダも2月に原油の輸入禁止を公表した。
ロシアの石油生産量は世界3位、天然ガス生産量は2位。国際金融協会(IIF)によると、エネルギー資源の輸出で得た収入はロシアの輸出額全体の約半分を占める。まさに大動脈への狙い撃ちといえる。
大動脈は止められない
ロシアNIS貿易会・ロシアNIS経済研究所所長の服部倫卓さんは「米国は石油、天然ガスの生産がともに世界一。ロシア依存は小さいので大胆な措置ができる面もある。カギを握るのはEUだ」と指摘する。
「ロシア産の石油や天然ガスの主な市場は欧州です。EUは段階的にロシア依存から脱却すると言うものの、見通せません。欧州へのガス供給はウクライナを通るパイプラインでつながっていますが、驚くことに戦争中の今も供給は続いている。それほど欧州の大動脈として組み込まれているものを止めるのは、並大抵ではないでしょう」
日本もひとごとではない。ロシアからは石油や天然ガス、石炭を輸入し、LNG開発事業「サハリン2」には三井物産と三菱商事が出資している。「今後のEUの動き次第では、難しい判断を迫られるかもしれません」(服部さん)
ただ、石油や天然ガスの輸入は、減るにしても当面はゼロにはならない。ロシアにとって「いま」深刻なのは、ビジネスの取引が軒並み止まり、壊滅的になっていることだという。
「SWIFTからの排除が発表されると、実際に決済ができない事態を待つことなく、起きるリスクを見越してさまざまな取引がストップしました。また企業はロシアとビジネスをすることによるイメージの低下を恐れて、続々と事業の停止や撤退を表明しています。当初の想定以上に制裁によるロシア包囲網が築かれつつあり、それに反してビジネスを続けることは、普通の企業ではもう難しいレベルになっていると思います」(同)