
認知症を発症した母と、母に寄り添う父を一人娘である信友直子監督がユーモアを交えて描いた「ぼけますから、よろしくお願いします。~おかえり お母さん~」が公開される。母の看取りまでを描いた本作には誰にでも訪れる“そのとき”がありのままに映され、学ぶことが多い。
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──本作は動員20万人を超える大ヒットとなった前作「ぼけますから、よろしくお願いします。」(2018年)の続編です。前作の内容も交えて描かれていますが、そもそもご両親を撮影し始めたきっかけは?
00年ごろに小型カメラを買い、練習のために広島県呉市に住む両親を撮り始めました。二人とも最初は緊張していましたが、帰省するたびに撮影していたので、そのうちに私=カメラを持っている、という認識になってまったく自然に映ってくれました。
母に変化が起こったのは13年、84歳のころからです。14年にアルツハイマー型認知症と診断されました。父に「呉に帰ってこようか」と言いましたが、「お前には仕事があるじゃろう」と。父は90代半ばにして、それまでやってこなかった家事や買い物などを自らやるようになったんです。
──お父さんがアイロンがけなどをマスターし、ユーモアを交えてお母さんをサポートする様子が感動的です。でもそんななかで、お母さまが倒れられたのですね。
母は前作の公開前、18年の9月30日に脳梗塞で倒れ、入院しました。最初はリハビリをして家に戻ろうと考えていて、父は母の介護のために98歳で筋トレを始め、毎日1時間歩いて病院にお見舞いに行くのが日課になりました。
でもその後、もう半身にも脳梗塞の影響が出ているとわかり、リハビリができなくなった。母はそのままベッドから起き上がれない状態で20年6月14日に亡くなりました。緊急事態宣言明けだったことが幸運でした。父と一緒に毎日短時間でも面会することができたんです。良いお別れができた気はしています。