週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「人工関節置換術 股関節」の解説を紹介する。
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股関節は体重を支え、歩くうえで重要な関節だ。加齢や過剰な負荷により軟骨がすり減ると、炎症が起きて痛みを感じるようになる。進行すると骨が変形したり破壊されたりして、変形性股関節症を発症する。股関節痛の主な原因であり、とくに40~50歳の女性に多い。
日本人には、先天的に股関節の形状に異常がある人が約8割と多くいる。寛骨臼形成不全と呼ばれる、骨盤側の関節のくぼみ部分の発育が悪い人は、関節のかみ合わせが不安定なために、二次性の変形性股関節症を発症しやすい。
症状は、股関節周囲の痛みや、股関節の曲げ伸ばしのしづらさ、歩行時のぐらつきなどが表われる。病状は徐々に進行し、関節の変形の程度により前股関節症、初期、進行期、末期の4段階に分けられる。ひどくなると痛みが強くなり、安静時にも痛みが出たり、脚長差が生じて歩き方がおかしくなったりする。
■金属やセラミックでできた人工関節に置き換える
整形外科では、X線、MRIなどの画像検査により関節の状態を調べる。治療の基本は、減量、生活動作の改善、消炎鎮痛薬などを用いた薬物治療、運動療法、理学療法といった「保存療法」だ。効果がない場合、「手術」が検討される。
手術法には、主に3つがある。「関節鏡視下手術」と「骨切り術」は、関節軟骨が残っている人が選択可能な治療で、関節温存術と呼ばれる。手術の主流となっているのは、関節を金属やセラミックでできた人工関節の置き換える、「人工股関節置換術」だ。最近では、人工関節の性能が向上して寿命が20年を超えるとともに、手術技術が進歩して脱臼などの合併症が起こりにくくなっている。