ウクライナから届く悲惨な映像を見て、太平洋戦争末期に地上戦で多くの犠牲者を出した沖縄に思いが至る。
沖縄と言えば、この侵略以前から、激化する米中対立で、台湾有事のリスクが喧伝されていたのはご存じのとおり。それを口実にして防衛費が増額され、敵基地攻撃能力の保有なども本格的に議論が始まった。そこにウクライナにおけるロシアの侵攻が加わったのだ。
冷戦後の常識が完全に覆るのを目の当たりにして、我が国の安全保障のあり方を根本から見直す必要があるという意見が出るのも不自然ではない。現に核共有の議論まで唱えられている。
こうした雰囲気の中で、「台湾有事は日本の有事」という考えが、「何となく」国民の間に浸透している。想定されているのは、戦火が沖縄に広がる事態だ。沖縄を守るためには、防衛費の増額、そして沖縄の基地強化が必要だという。これも「何となく」多くの人に受け入れられつつある。沖縄のために沖縄を「要塞化」し、「攻撃拠点」にもすることで戦争を防ぐという「抑止力」の論理だ。
そんな折、私は3月26日に沖縄県主催のシンポジウムに出席した。今回は、そこで私が話したことのうち二点に絞って紹介してみたい。
一つ目は「沖縄戦」への備えと経済について。「沖縄戦」に備えると言えば言うほど、経済面では、深刻なダメージが生じることが見過ごされている。戦争リスクが高いところに投資する人はいないということを無視しているのだ。
沖縄以外に立地できないビジネスなら別だが、普通の企業は日本中、さらには世界の中で最適立地を探す。つまり、今沖縄に一番必要なのは、マーケットに「沖縄が戦争に巻き込まれることはない」という安心感を与えることだ。その意味で、政府は、沖縄のための政策を実施しているとは全く言えない。
二つ目は、沖縄の未来が変わったということについて。基地と戦争の問題がなければ、実は、沖縄は飛躍の時代を迎えている。これからは、脱炭素が全てのカギを握る。世界のサプライチェーンでは下請けメーカーにもカーボンニュートラル実現を要求する動きが急だ。