北京では銀メダルのアレクサンドラ・トルソワ(ROC/17歳)や、金メダル候補とされたカミラ・ワリエワ(ROC/15歳)も10代だ。ROCの3人は、いずれもプログラムの中に4回転など高難度のジャンプを組み込んでいた。

岡部さんはこうした点を踏まえ、
「年齢を引き上げることによって、スケート自体の良さが出てくるのではないかと。成熟したスケーターがより長くトップに君臨することによってファンもずっと長く楽しめるのではないでしょうか」
と話した。
次に演技構成点の変更について。
フィギュアスケートは、ジャンプ、スピン、ステップなどの「技術点(エレメンツ)」と「演技構成点(プログラムコンポーネンツ)」の合計得点で競う。今回のルール改正で、これまでの演技構成点の5項目が、3項目に変更となった。
岡部さんは、
「ジャッジが見るところは今までと変わりませんが、オーバーラップしたところを精査し、まとめたことによって、ジャッジがよりシンプルに採点できるのではないでしょうか」と説明する。
町田さんは、
「確かに岡部さんのおっしゃる通り、演技構成点の採点項目が大幅に削減されたわけではなく、整理整頓されたというのが正しい解釈かと思います。ただし、私が今回の改正で少し気になったのは、『美的価値』の評価基準に対して、『芸術的価値』をめぐる評価基準の比重が、旧ルールよりも軽くなったと感じられるような規則文面になっていることです」
と指摘し、こう続けた。
「実は、美学の領域において、『美しさ』には2種類あるとされています。一つは『美的価値』、もう一つが『芸術的価値』です。『美的価値』は、何が美しいのかという理想が明確に定義されていて、その理想にいかに近いか遠いか、で評価することができる美しさになります。たとえば、ジャンプの美しさ(ジャンプが高いか低いかで評価)、ポジションの美しさ(決められた通りのポジションになっているかどうかで評価)、リズム感(音のリズムに適合しているか否かで評価)、などがそれに該当します」