労働生産性も人件費も減っている企業は赤色をつけている。オリエンタルランドやエイチ・アイ・エスなどがあった。
労働分配率については、収益の主な源泉が人なのか、それとも機械なのかなどによって業種ごとに大きく数字が異なり、一概にどの水準がいいとは言えない難しさがある。しかし、業種の平均と大きく乖離していれば、改善の余地はないか検討する必要はあるだろう。今回調査した各業種の大企業の労働分配率の平均を見てみると、自動車は29%、機械は34%、小売は57%、金融は42%などとなっている(上の表)。
業種ごとに各社の動向をもう少し詳しく見ていこう。
自動車では、労働生産性の伸び率は、ほとんどの企業がマイナスになっているのがわかる。一方で人件費の伸び率については明暗が分かれている。
トヨタ自動車は労働生産性の伸び率はマイナス16%だったが、人件費は増加した。トヨタ自動車は昨年の春闘の際にも、労働組合側の要求に対して満額回答をしている。営業利益が減っている要因もあるが、労働分配率は15%から19%に上昇している。
その他にもいすず自動車や豊田自動織機も労働生産性が落ちながらも、人件費が伸びている。労働分配率もそれぞれ51%から62%に、9%から11%に上昇している。東京商工リサーチの担当者はこう見る。
「トヨタは賃上げに積極的に取り組んでいる企業の一つ。本来であれば、人件費は、労働生産性の伸びに後追いする形になる。労働生産性が減少している中での人件費に投資するというのは先行投資に他ならない。今後、利益を出し、人件費も伸ばし続けられるかが問われてくるでしょう」
他方で、労働生産性でも人件費でもマイナスの伸び率になっているのがマツダと三菱自動車などだ。
マツダの労働生産性の伸び率はマイナス29%で、人件費も減少。労働分配率は15%から19%に上がっているが、労働生産性が大きく減少したためで、良い上がり方ではない。