2ゴールを決めた三笘薫(右)
2ゴールを決めた三笘薫(右)
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 昨年9月にスタートした2022年サッカーW杯カタール大会アジア最終予選。日本代表は序盤の3戦で2敗を喫するなど一時は崖っぷちに追い込まれたが、4戦目以降は負けなしで3月24日の敵地でのオーストラリア戦にも2-0と勝利。苦しみながらもV字回復し、6連勝で29日のホームでのベトナム戦を残して7大会連続でのW杯出場を決めた。

 引き分けでもW杯出場が近づく一方、負ければプレーオフに回らずストレートでのW杯出場権獲得(2位以内)が遠のく可能性もあったライバル・オーストラリアとの一戦。終盤までスコアが動かず、ヒリヒリするような拮抗した展開が続いていたが、そんな空気を打ち破ったのは84分から出場した“ジョーカー”三笘薫(24)だった。

 左ウィングの三笘は89分、山根視来(28)のクロスに合わせて先制点を挙げると、ロスタイムには得意のドリブルでDF3人をかわして、右足を振り抜き追加点を挙げた。

「(0-0の展開で前に)行くしかないと思っていた。ベンチで見ていてチャンスは来ると思っていたし、自分が得点を決めて、勝てて嬉しい」

 普段はクールな男も、感情を爆発させた。

 昨年11月の敵地オマーン戦で後半から出場し、決勝点をアシストするなど日本代表に鮮烈にデビューすると、2戦目でもわずかな出場時間で大仕事をやってのけた三笘。東京五輪ではメンバー入りしながら多くのチャンスをもらえず、最終予選に入っても周囲の期待とは裏腹に森保一監督の起用は限定的だった。それだけにメディアやファンの間では「もっと早くから起用しておけば、(最終予選で)こんなに苦労することもなかった」と指摘する声も少なくない。

 三笘は現在、ベルギー1部で首位を走るサンジロワーズでプレーする。ストライドが大きく、しなやかな身のこなしで前進する自慢のドリブルは欧州でも通用することを示している。

 11月に開幕するW杯まであと約8カ月。大一番を前にも「緊張はない。普段と変わらない」と話していた三笘は、本大会ではキーマンとなり得るのか。今後の森保監督の起用法にも注目が集まる。(栗原正夫)

週刊朝日  2022年4月8日号