幅広の麺にもっちりした食感、香辛料の香りが特徴。その名もビャンビャン麺。響きも漢字もインパクト大のこの麺。人気がじわじわ広がって、日本にも定着しそうな勢いです。AERA2022年4月4日号の記事を紹介する。
【写真】ビャンビャン麺の火付け役「西安麺荘 秦唐記」オーナーの小川克実さんと西安市出身の料理長
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長さ18センチ、幅8センチほどの薄い生地を料理人が両手に持ち、リズミカルに麺打ち台に2、3回叩きつける。生地がみるみるうちに紐状に伸び、1本の長い幅広の麺ができあがる。
ゆで時間は1分ほど。水でしめてから湯にくぐらせ、温めてから丼へ。刻んだチャーシューと野菜の具を盛り、唐辛子と花椒をたっぷりのせる。煙が立つほど熱した油をジャッと一気にかけたら、香辛料の香りが食欲をそそる「ビャンビャン麺」のできあがりだ。
ビャンビャン麺は、中国の西安市がある陝西(せんせい)地方の郷土料理。幅広の長い麺の形と料理名の響き、「ビャン」の漢字がこの麺料理にしか使われない57画もあるという珍しさから、じわじわと人気を集めている。
火付け役は、東京に4店舗を構える「西安麺荘 秦唐記」だ。オーナーでソンメー商事代表取締役の小川克実さんは、売り出したきっかけをこう話す。小川さんは中国山東省の出身。千葉商科大学で経済学を学び、2012年、日本国籍を取得した。
「餃子専門店などを成功させ、次の出店を考えていたとき、西安市出身の調理長がまかないにビャンビャン麺を作ってくれたんです。びっくりしました。中国出身の私でも初めて見る打ち方や麺の形だったからです。名前や漢字の画数にインパクトがあり、専門店を出せば人気が出ると考えました」(小川さん)
とはいえ、まかないをそのままメニューにはできない。ビャンビャン麺は、じつは麺そのものを指す。陝西地方では、熱した油だけをかけて食べたり、トマトと卵を炒めてのせたり、具の種類はさまざま。小川さんは専門店として胸を張れる具と麺の組み合わせを試行錯誤した。