イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 その後、リクエスト曲は『最後の春休み』(松任谷由実)。何気なく聴いてると……「もうすぐ別の道を歩き 思い出してもくれないの」という歌詞。?? どっかで聞いたことがある、このフレーズ……。「あっ!?」と声が出た。確か、少し前のこの連載の『15歳』というお題の時。私は中学卒業間際にフラれた話を書いた。そのお断りの手紙に、このフレーズが「私の好きな曲の歌詞です」という注意書きとともに書いてあったのを思い出したのだ。記憶というものは不思議なもので、その時の便箋や封筒、女の子の筆跡が一瞬にして頭の中を巡る。そうだ! 「好きな人がいます」とも書いてあった! 待てよ。好きな人がいるからと私をフっておいてだな、「もうすぐ別の道を歩き 思い出してもくれないの」とはどういう言い草だ? 誰に向けての言葉だ? 俺ならあの頃ずーっと思い出してたぞ。44歳になってまた思い出した! その好きな相手に言ってるとしたら、なぜ俺への手紙に書くのかっ!?

 結論。中学生はよくわからない。それが私の『春休み』の思い出です。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!

週刊朝日  2022年4月8日号

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