春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「春休み」。

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 ラジオ番組をやっていると季節によってリスナーから募るメッセージテーマが偏ってしまうことが、ままある。この時期は「卒業」「入学」「お花見」「新生活」などなど。どの番組も似たり寄ったりのテーマでお送りしているが、ラジオは生活に寄り添ったものだからそれでいいのだ。急に「今日のテーマは『はじめてのレジオネラ菌』!」とか「『東金やっさまつり』についてメール待ってます!」とか言われてもみんな困っちゃうもの。

 お題がオーソドックスでも内容が「閲覧注意」な場合がある。先日『卒業』というテーマでこんなのがあった。50代男性からのメール。[高3の秋。憧れの真知子さん(仮)に告白しました。「今は受験だからごめんなさい!」とふられて、そのまま卒業式を迎えました。式のあと、真知子さんが私のそばに来て「あなたの第2ボタン、もらえませんか?」。「もちろん!」とボタンを渡すと真知子さんは嬉しそうに友達のほうへ走っていきました。「フラれたと思ったけど、あれは『受験だからちょっと待っててね(ハート)』ということだったのか!? これから真知子さんとの恋が始まるんだっ!!(喜)」とウキウキ気分の帰り道。公園の脇を通ると、真知子さんと数人の友達の姿が。「もらってきた!?」「うん!」。真知子さんは私の第2ボタンをポケットから取り出して、公園の敷石の上に放りました。すると友達の一人が「いくよっ!!」と大きなハンマーを振り上げ、ボタン目がけて思い切り振り下ろします。ペシャンコになった第2ボタン。私は思わず息をのみ込みました。「これくらいしとかないと、あんなヤツに告白された『厄』は落ちないからねっ!」と友達。「だよねー。なんかあれから気持ち悪くって。ホントありがとうっ!」と真知子さん。私はバレないように踵を返して、いま来た方向へもどっていきました。それが私の卒業の思い出です]……多少盛ってるかもしれないが、午前中の番組で読むメールではなかったかもしれん。

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