林 達・ストックマーク/ 自然言語処理の技術を活用し、人工知能(AI)がその人に必要な情報を探し出すサービスを展開。1500社以上がサービスを利用している。ホワイトカラーが日々行う地味で膨大な作業からの解放をめざす(写真=写真部・松永卓也)

■大反省会に興味わく

 もちろんお金儲けもありますが、それ以上に「お前らも頑張れよ」という意識が強い。自分も起業や事業を経験していますからアドバイスもできるし、若い起業家も言うことを聞く。その好循環がシリコンバレーを生んだのだと思います。

──伊佐山さんは金融出身です。

伊佐山:学生時代は米スタンフォード大学の学生と組んでウェブデザインとコンサルを行うArch Pacificという会社をやっていましたが、卒業後は日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に就職して、法人営業や市場業務をしていました。入行5年目の2001年にスタンフォードのビジネススクールに留学しました。

 ちょうどITバブルが弾けて大反省会になっていた時期で、起業に関わっていた人たちが「なぜ失敗したのか」を赤裸々に語ってくれたのに興味がわいて。子供を3人抱えて大変な時期だったのですが、「こっちでベンチャーを体験したい」とわがままを言って興銀を辞め、友人のベンチャー支援を経て、03年にドール・キャピタル・マネジメント(DCM)に入りました。

 最初は通訳のような仕事をしていましたが、やがてネットメディアやモバイル、コンシューマーサービス分野への投資を担当するようになり、パートナーにもなりました。10年ほど米国のVC(ベンチャーキャピタル)で丁稚(でっち)奉公して、日本のヤフーのCIO(チーフ・インキュベーション・オフィサー=新規事業開発の最高責任者)をしていた松本真尚、サイバーエージェントの専務取締役COO(最高執行責任者)だった西條晋一とWiLを共同創業しました。

■他人の金でギャンブル

──自分で事業はやらなかったのですね。

伊佐山:事業を生み出す仕組みづくりに興味があったんです。潤沢なリスクマネーがある米国では頭のいい人たちが起業するんです。役所に入ったり大企業に就職したりするより、将来性が高く、社会に貢献できて、自己実現もできるからです。お金を借りて起業すると失敗した時借金が残りますが、リスクマネーなら、リスクを引き受けるのはVCです。つまり失敗しても「学び」だけが残る。極端に言えば他人の金でギャンブルして、うまくいったら大金持ち、ですから。やらない手はない。

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