2014年のダービーを制したワンアンドオンリー
2014年のダービーを制したワンアンドオンリー
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 実績馬が期待どおりに強いレースを見せて勝つのは競馬の面白さではあるが、その逆に伏兵が下馬評を覆して度肝を抜くのもまた競馬の醍醐味。今回は一世一代の大駆けで歴史に名を刻んだ馬たちを取り上げてみる。

 このテーマで多くのファンが真っ先に思い浮かべるのは、やはり「これはびっくり、ダイユウサク!」だろう。4歳秋(旧馬齢表記)の遅いデビュー後も出世はじりじりとした歩みのダイユウサクは、91年に明け7歳の金杯(西)(現:京都金杯)でようやく重賞初制覇を果たした遅咲きだった。

 その年の秋はマイル路線を歩んでG1マイルチャンピオンシップでは5着と健闘。続くOPの阪神マイル戦を勝ってG1有馬記念へ駒を進めたが、一気の距離延長もあってブービーの14番人気と完全に人気の死角となっていた。

 だが本番では最終コーナーで先頭に立った天皇賞馬プレクラスニーを直線で強襲。大本命のメジロマックイーンの追撃も封じ込む完璧な競馬で暮れの大一番を制してみせた。その勝ちタイム2分30秒6は、従来の記録を1秒以上も上回る日本レコード。文句のつけようがない快勝だった。

 8歳となった92年は6戦して6着が最高と勝利を積み上げることなく引退。だが有馬記念の一発で今なお史上屈指の穴馬としてファンの間で語り継がれる存在となった。

 単勝配当4万3060円というグレード制施行後のG1最高記録を今なお保持しているのは、1989年のエリザベス女王杯を20頭立ての20番人気で制したサンドピアリス。この年4歳だったサンドピアリスは3月にデビュー勝ちこそしたものの、その後は秋まで1勝したのみでクラシックにも出られず。しかも勝ち鞍はいずれもダートで芝では条件戦でも8着が最高と振るわなかったため、出走枠に滑り込んだ11月のエリザベス女王杯では全く人気がなかったのも当然ではあった。

 だが本番では同期の桜花賞馬で1番人気のシャダイカグラが故障したこともあって、上位入線は20番人気、10番人気、14番人気というまさかの結果に。当時は馬連さえ存在しなかったが、もし3連単が導入されていたら配当はどうなっていたのだろうと今でも話のタネになるほどの大波乱だった。

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「展開のアヤ」という競馬の恐ろしさ知らしめたのは?