PCR検査でコロナ陽性と判明したら、医師には発生届を作成し保健所に提出する義務があります。発生届にはコロナワクチン接種の有無や接種日、ワクチンの種類など接種歴の有無を詳しく書く蘭があるため、未接種であるかどうかも分かります。そこで私は、無理のない範囲内で未接種の理由を聞くようにしています。ワクチン未接種につながるワクチン忌避は、世界共通の問題であるからです。

 ワクチン忌避にかかわる要因は、主に3つあることが指摘されています。1つ目は「信頼(confidence)」です。政府や医療に対する不信、ワクチンの有効性や安全性に対する不信は、ワクチン接種を進めるうえで障壁となる可能性が指摘されています。外来でも、「ワクチンは信頼できないから打ちたくない」「国産のコロナワクチンでないと接種しません」という声は少なからず聞かれます。

 2020年10月にネイチャーメディシンに掲載されたJV Lazarus氏らが19カ国を対象とした調査の結果、「政府を信頼している」と答えた人は「信頼していない」と答えた人よりも、ワクチンを受け入れる可能性が高かったことが分かりました。RJD Vergara氏らは、コロナワクチンに限らず、ワクチン接種の普及は国民の政府への信頼に基づくと言及しています。

 2つ目は「利便性(convenience)」です。1回目のコロナワクチンの集団接種が始まった当初、「自宅近くの接種会場では全く予約が取れず、電車やバスを乗り継いで来た」「オンライン予約できず、孫に予約してもらった」という声をよく聞きました。接種場所や時間、価格、接種サービスの質、接種の予約などが「利便性」にかかわります。特に、孤立した高齢者や貧困層といった社会から取り残されがちな集団は、接種費用が無料であっても、「オンライン予約ができない」「接種会場まで行く手段がない」などの問題が残ることが指摘されています。予約ができない、接種会場まで行く手段がない、といった理由で諦めた方は結構いらっしゃるのかもしれないと、集団接種のお手伝いをして感じました。

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