落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「スウェット」。
* * *
流行ってるらしい。「流行ってるみたいなので次のお題は『スウェット』で……」というボンヤリした指令が担当者から下された。聞いたことない。ホントに流行ってんのかよ、スウェット。
かく言う私は基本自宅では上下鼠色。正真正銘折り紙付きのスウェットマン。自宅内や朝のゴミ出し、深夜のコンビニだけでなく、スーパー、通院、自宅から半径500メートル以内ならむしろスウェットで行くべき、と考えている。我が町内にもそんな人は多いが、それだけでは「流行ってる」とは言えまい。
流行ってるというならまず「渋谷」だ。ニュースの定点カメラでよく見る、渋谷のスクランブル交差点。スウェットの若者は見かけない。むしろこいつらもっと上下鼠色のスウェット着ればいいのに、と思う。ちっとも流行ってねえし。担当者は平気な顔でウソをつく。
だからもう今回はおしまい。無理筋な原稿は諦めて、そろそろ寄席に出掛けねば。
何を着よう。寄席に上下スウェットで行くと偉い人に怒られる。世の中世知辛い。
自分で洋服を買うことがない私は、衣類はだいたいお客からのお差し入れで間に合わせている。
先月は「足袋型の靴下、欲しいなぁ」と高座で呟いたら一足貰ってしまった。まるで物乞い。
先日は、東京かわら版という演芸情報誌で「ブランドの服を芸人に着せてみよう!」みたいなタイアップ企画があり、オシャレなトレーナーを沢山もらってしまった。金色のクマの奴。今日はそれにしようか。
そういえばラジオのスタッフさんからは誕生日プレゼントでパーカーをもらった。あれもゆったりしてて着心地良し。
落語好きの洋服屋さんがいて、去年Tシャツも頂いた。一点モノらしい。ズボン(最近は「パンツ」と呼ぶらしいが、「パンツ」は断固下着!)も柔らか素材の貰い物があったはず。