――芝居の醍醐味をこう語る。

神木:自分以外の人間のことをたくさん研究して、どこか自分と合うところを提示するのがすごく楽しい。物語の中でどんなにうれしいことや悲しいことがあっても、自分自身の事情や感情とは全く関係ない。役を演じている最中は自分のことは一切考えなくていいんです。現実の日常は凄まじく劇的なことはそうそう起きないですよね。それが平和でいい。だけど役を演じることで、自分が体験したことのない劇的な人生を味わうこともできる。他人になれて、自分のことを忘れられるのが楽しいんです。

――俳優を辞めようと考えたことはないのだろうか。

神木:基本的にはないです。ただ、高校を卒業する節目では、「本当に続けていいのかな」とか「辞めたらどうなるのかな」とは考えました。でも、それは節目に向き合う上で普通の悩みだと思いますし、結局、“楽しい”が勝って、「続けていきたいな」という思いのほうが強かったので、続けています。

――演じることはきっと天職なのだろう。もしも生まれ変わっても、俳優を選びますか。

神木:嫌です! 来世があるなら、絶対に役者にはなりません(笑)。役者の人生はもう経験したので、ピアノが弾けて、超イケメンで高身長の物理学者になります! 絶対に、その一択です。

――2023年前期の朝ドラ「らんまん」では主演を務める。着実にキャリアを重ねているが、20代も残すところあと1年あまり。“神木隆之介”個人として、目標はあるのだろうか。

神木:20代のうちにやっておきたいこともやり残したこともないです。ただ、「この高校生みたいなノリのままでいいのかな?」とは思うことはあります。

 僕がかつて思い描いていた29歳や30歳は、久しぶりに会った人に落ち着いて応える人ですが、僕自身はまだ全然そうなれてない。さっきも松村北斗に会った瞬間、「松ちゃん~!!」て言いましたから(笑)。何とか大人ぶった30代を過ごしたいと思います。

(ライター・小松香里)

AERA 2022年4月11日号

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